民法改正案 生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効

英国
rental;wikipedia イギリスの国章 https://goo.gl/48s5Hc

生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効

人の生命又は身体の侵害による損害賠償の請求権について、次のような規律を設けるものとする。

【改正案】新設
(1)第724条の2 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。

(2)第167条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第2号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする。

【ポイント】
(1)不法行為に基づく損害賠償請求権の主観的起算点からの消滅時効期間。債務不履行は短期化。不法行為は長期化。
(2)債務不履行に基づく損害賠償請求権の客観的起算点からの消滅時効期間。債務不履行は長期化、不法行為は期間変わらず。

本規律は724条の重要な特則となる(生命・身体は重要な法益であるため)。
①不法行為による損害賠償請求だけでなく、債務不履行による損害賠償請求も含む。
②債権者側・債務者側双方の利害を考慮。
③労働契約における安全配慮義務違反の事案で、債務不履行の損害賠償請求に影響。⇒ 労働契約における安全配慮義務違反の事案につき、時効期間によって法律構成を変える必要がなくなる。

参考 日本司法書士会連合会民事法改正対策部資料

民法改正案 不法行為による損害賠償請求の消滅時効 

アルゼンチン国章
rental;wikipedia アルゼンチンの国章

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(民法第724条関係)

民法第724条の規律を次のように改めるものとする。
【改正案】
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

(1) 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。

(2) 不法行為の時から20年間行使しないとき。

【ポイント】
(1)一般原則の消滅時効期間よりも短くなる。加害者の不安定な立場を保護する趣旨なので、問題なし。
(2)判例変更→ 除斥期間ではなく、時効期間となる。これは被害者救済の観点によるもの。よって、時効の完成猶予や更新が可能となる。

【参考】
旧条文
第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20 年を経過したときも、同様とする。

参考 日本司法書士会連合会民事法改正対策部資料

民法改正案 職業別短期消滅時効等の廃止

アメリカ
rental;wikipedia アメリカ合衆国の国章
https://goo.gl/n7IhLI

職業別の短期消滅時効等の廃止  民法第170条から第174条までを削除するものとする。

【ポイント】
・本来は、日常頻繁・少額・領収書発行されないことも多い類型の法律関係を早期に確定させる趣旨だったが、そもそも職業蔑視につながり、今となっては時代にそぐわず区別の合理的理由も見いだせないため廃止。
・現代は契約が多様化・複雑化しているので、債権の類型に応じて新たに時効期間を分けるという方針は採用せず。
・消滅時効についての一般原則が適用(いずれも契約による債権なので、事実上起算点変わらず、時効期間5年となる。)
・特別法の短期消滅時効は廃止されない。(労基法の賃金債権など)

以下のような各種消滅時効の期間はすべて「権利を行使できることを知ったときから5年」「権利を行使できるときから10年」
現行民法
原則→知人から借りた金銭→時効期間10年  
設計・施工・監理を業とする者の工事に関する債権→設計・工事を依頼したときの代金→3年
学芸・技能の教育を行う者が生徒の教育・衣食・寄宿の代価に関する債権→ピアノ、書道教室などの月謝→2年
衣料・器具などの動産の使用料に関する債権・料理店の飲食料にかかる債権→レンタル店のレンタル料・飲食店の代価→1年

参考 日本司法書士会連合会民事法改正対策部資料

民法改正案 消滅時効

アイルランド
rental;wikipedia アイルランドの国章
https://goo.gl/14Qmxr

1 債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点
民法第166条第1項及び第167条第1項の債権に関する規律を次のように改めるものとする。
【改正案】
第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
(1)債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
(2)権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。
2 (略)参考→債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 (略)参考→前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

【ポイント】
(1)一般的な消滅時効の期間は主観的起算点からは5年に短縮される。債権の種類に応じて細かく区分された時効期間は複雑で分かりにくいことから時効期間を統一する必要性があった。債権者の権利行使の機会を確保し、法律関係の早期安定を図る趣旨。主観的起算点の追加すなわち「知った時」は「債務者を知る」ことも含む。
(2)本規律の客観的起算点と(1)の主観的起算点とが一致するもの
・「確定期限の定めのある債権」
・「期限の定めのない債権」(ただし、賃料債権等、相当期間経過したことを知った時等を起算点とするものは除く。)
・「事務管理に基づく費用償還請求権」(事務管理の成立の時が起算点となり、成立の時点で債権者は成立を知っていることになるから。)
(2)本規律の客観的起算点と(1)の主観的起算点とが異なりうるもの
・「不確定期限付き債権」
・「条件付き債権」
・「期限の定めのない債権」のうち、賃料債権等、相当期間経過したことを知った時等を起算点とするもの。
・「契約に基づく債務不履行の損害賠償請求権」(本来の債務の履行を請求することができることを知った時が起算点であるから。)
・「金融商品の取引における債務不履行の損害賠償請求権」(損害の確定時から起算されるとは限らず、当該事案における債権者の具体的権利行使の可能性を考慮して起算点を判断することになるから。)
・「雇用契約上の安全配慮義務違反の損害賠償請求権」(損害発生の事実を知ったのみではなく、一般人にとって債務不履行に該当するか否かの判断が可能な程度に事実を知ったか、債権者の具体的権利行使の可能性を考慮して起算点を判断することになるから。)
・「不当利得返還請求権」(原則として債権者が不当利得返還請求権の発生を知った時であり、過払いなどでは、不当利得返還請求権を行使することができるか否かの判断が可能な程度に事実を知ったと言えるか、債権者の具体的権利行使の可能性をも考慮して起算点を判断することになるから。)

【参考】
商法522条の削除 上記の改正により存在意義が乏しくなる。
(商法)第522条 商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによ
る。

参考 日本司法書士会連合会民事法性対策部資料

民法改正案 条件及び期限

アイスランド

rental;wikipedia アイスランドの国章
https://goo.gl/XHN066

1 効力始期の新設及び期限の概念の整理
(1) 効力始期の新設
効力始期について、次のような規律を設けるものとする。

ア 法律行為に効力始期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に生ずる。

イ 民法第128条及び第129条の規定は、効力始期について準用する。

(2) 期限の概念の整理
民法第135 条第1項の規律を次のように改めるものとする。
法律行為に請求始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。

【ポイント】

現135条1項の「始期」は効力が既に生じており、期限の到来時に請求権が発生する「請求始期」であるものの、同条2項の「終期」は期限の到来時に法律行為の効力が終了する「効力終期」であるというように、請求できる時期と効力の生じる時期が曖昧になっている。

(1) 効力始期の新設

ア  期限の到来時に効力が発生する「効力始期(将来到来することが確実な事実に法律行為の効力の発生を係らしめること)」を新設。
条件にも、「効力」と「請求」という関係の問題があり、現行法下の停止条件、解除条件は効力に関するものであり、「請求条件」に関する規律が欠いている状態だが、実務上の要請乏しく、複雑になるため見送られた。

イ 「効力始期」であっても、効力始期の到来により権利を得るものは事前に権利の処分可(期限到来時にその法律行為によって得るべき利益を害することは認められるべきではないから。)
現136条、現137条は文言上「債務者」とされているから「請求始期」を前提とすべきものであり、契約について付された場合にそれがどちらの当事者の利益のためのものかを判断し、かつ、その放棄を認めることが難しいため、「効力始期」に適用なし。

(2) 期限の概念の整理
今までの「始期」を「請求始期(将来到来することが確実な事実に法律行為の履行の請求を可能とすることを係らしめること)」とする。

2 不正な条件成就

不正な条件成就について、次のような規律を設けるものとする。

条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件の成就を実現させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。

【ポイント】

条件の成就によって利益を受ける当事者が当事者間で想定されていなかった方法を使って条件成就したことに関する判例の明文化(最判平成6年5月31日)。
「不正」とは、「故意に条件を付した趣旨に反して」という意味。

民法改正案 無効及び取り消し

Code_Civil_1804
rental;wikipediaフランス民法典1ページ
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/e7/Code_Civil_1804.png

法律行為が無効である場合又は取り消された場合の効果について、次のような規律を設けるものとする。

【改正案】新設
第121条の2 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。

2 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

3 第1項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。

【参考】
第703 条法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
第704 条悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

【ポイント】①原状回復の範囲 有償行為で相手方が善意→全部の返還 有償行為で相手方が悪意→全部の返還 無償行為で相手方が善意→現存利益内の返還 無償行為で相手方が悪意→全部の返還 意思無能力者→現存利益の返還 ②利息 無効取消しの原因は様々であるため、利息については依然解釈による。

【追認】第124条関係 追認については、取消の原因となっていた状況が解消されかつ取消権を知ったのちでなければ認められない。ただし、法定代理人、保佐人、補助人並びに法定代理人、保佐人、補助人の同意を得た制限行為能力者(成年被後見人を除く)の追認については、取消しの原因となっていた状況が解消されたのちであることを要しない。

民法改正案 無権代理人の責任

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【改正案】

第117条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

【現行】
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない

【ポイント】
判例に基づき、無権代理人の無過失責任と相手方の無過失のバランスを考慮した立てつけとなっている。
(1)現行と変わらず。ただし立証責任が無権代理人にあることの明確化。
(2)「相手方の過失」と「代理人の悪意」との関係 無権代理につき相手方が悪意・有過失もしくは代理人が制限行為能力者である場合、無権代理人は責任を負わない。過失は単なる過失で足り重過失である必要はない。第1項が無権代理人に無過失責任という重い責任を負わせたところとのバランスで、相手方において無権代理につき悪意・有過失あるときは、同条の保護に値しないものとして、無権代理人の免責を認めた。ただし、無権代理人が悪意である場合には(相手方が有過失であっても)無権代理人の責任を負う旨の規定を新設した。

民法改正案 代理権消滅後の表見代理

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rental;wikipediaアメリカ合衆国憲法原本1ページ目https://commons.
wikimedia.org/wiki/File:United_States_Constitution.jpg

【改正案】
第112条 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
2 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をし
たときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

【現行】
第112 条 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

【ポイント】
(1)善意の明確化 第1項の善意が、代理権の不存在に対する善意手はなく、過去に存在した代理権が代理行為の前に消滅したことを知らなかったという意味での善意であることを「代理権消滅の事実」とすることで明示。
(2)判例明文化(大連判昭和19 年12月22 日)(最判昭和32 年11 月29 日)新112条と新110条の重畳適用。第109条の改正と同様、第2項において、代理権の消滅について第三者が善意無過失であった場合、代理権の範囲を超える行為をすることについて、代理権があると信じるにつき正当な理由が認められる場合は、第三者が保護されるとする。

民法改正案 代理権授与の表示による表見代理

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rental;wikipedia,スイス民法典初版 https://commons.wikimedia.org/
wiki/File:Swiss_civil_code_1907.jpg

【改正案】
第109条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外
の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。
第110条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

【現行】
109条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
110条 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

【ポイント】
判例明文化(最判昭和45 年7月28 日) 新109 条と新110 条の重畳適用可を新109条2項で明示。基本代理権があるかのような表示がなされた場合、これを基本代理権とし、表示された基本代理権の範囲外の行為をしたことについて、相手方が代理権があると信じたことに正当事由がある場合には、本人に責任を負わせるとする。

民法改正案 代理権の濫用

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rental;wikipedia,https://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Stielers_Handatlas_1891_63.jpg

【改正案】新設
第107条 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

【ポイント】
「代理権の濫用」についての立法的な手当。相手方が自己又は第三者の利益を図る目的を「知り、知ることができた」とき、その効果は、無権代理行為とみなすこととした(本人には法律効果は帰属せず、代理人は無権代理人の責任を負う)。相手方の「知り、知ることができたとき」の主張立証責任は、代理権を否定する側の本人。