リーガルノート

司法書士 石原幹司郎の民法ノートです。
このエントリーをはてなブックマークに追加

Note一覧

民法改正 履行遅滞中の履行不能

rental;wikipedia ウクライナの国章

履行遅滞中の履行不能(民法第413条の2)

履行遅滞中の履行不能について、次のような規律を設けるものとする。

【新設】
第413条の2 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

【ポイント】
判例明文化(大判明治39 年10 月29日)
債務不履行による損害賠償責任の免責事由として民法第415条により、債務者の責めに帰することのできない場合、債権者は損害賠償請求ができないと定められている。では、履行遅滞になった後、債務者の責めに帰することのできない事由によって履行不能になった場合、損害賠償請求が可能なのか、との疑問に対し債務者の責めに帰すべき事由によって履行不能になったものとみなすというルールを定めた。つまり免責事由のない履行不能も、履行遅滞が前提として生じれば、帰責事由ありとなり、責任を負わなければならない。

【参考】受領遅滞中の履行不能
第2項 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料

未成年者の相続放棄

rental;wikipedia トルコの首都アンカラの市章

Q 相続人が未成年者等である場合の相続放棄はどのようにするのか?(未成年者の相続放棄)

A 未成年者の法律行為は法定代理人である親権者が代わりに行うのが原則です。ただし、親権者と未成年者との間で利益が相反する場合は、家庭裁判所に申し立てて特別代理人を選任しなければなりません。もっとも、親権者自身も同時に相続放棄する場合は、法定代理人として未成年者のために相続放棄することができるとされています。熟慮期間の起算点は、法定代理人が未成年者のために相続の開始があったことを知った時から起算されます。相続人が成年被後見人である場合も同様です。ただし成年後見監督人が選任されている場合は、かかる監督人が被後見人に代わって放棄することになり、特別代理人の選任は不要です。なお、後見人が被後見人より先もしくは同時に相続放棄する場合でも後見監督人の同意が必要です。相続人が被保佐人である場合は、特別代理人の選任は不要です。民法13条6号により、被保佐人は保佐人の同意を得て相続の承認・放棄をすることができるからです。

特別代理人の選任申立手続き(親子間の利益相反)
利益相反(親子間の利害の衝突)の判断は、客観的、外形的に考察すべきであり、親権者の動機や意図に基づいて判定すべきではないとされます。
申立人 親権者、後見人、子の親族その他の利害関係人
管轄  子(未成年被後見人)の住所地の家庭裁判所
添付  ①親権者 ②子の戸籍謄本 ③特別代理人候補者の戸籍謄本 ④利益相反に関する資料(遺産分割協議書案、契約証書案など)

家庭裁判所ウェブページ特別代理人選任申立書記載例はこちら

【参考】
◆家庭裁判所での相続放棄の申述の受理は、一応の公証を意味するに止まり、相続の放棄が有効か無効かを終局的に確定するものではなく、その有効か無効かは民事訴訟法による裁判によってのみ終局的に解決するものである。(東京高判昭27・11・25)

◆共同相続人により相続登記後その一部が相続を放棄した場合、残余の相続人において相続放棄を登記原因として放棄者に対し、その持分の移転登記を求めることができる。(東京地昭31・9・26判決)

◆配偶者と数人の子が共同相続人である場合に、この一部が相続を放棄したときは、放棄した子の相続分は他の相続人である残りの子と配偶者とに相続分に応じて帰属すると解するのが正当である。(最高昭43・2・27三小判決)

参考 新日本法規 相続における承認・放棄の実務

旧民法 「隠居と家督相続」


rental;wikipedia,三朝温泉温泉本通り

隠居と家督相続

【家督相続】
・家督相続とは、旧法における「家」の相続。戸主の交替。
・家督相続の効果として、家長である戸主の地位を承継する。当然に「家」の財産全部を受け継ぐ。
・家督相続の開始原因は死亡相続と生前相続(隠居・去家・女戸主の入夫婚姻など)。

以上を踏まえて・・・・

【隠居】とは
戸主が自ら戸主の地位を退き、家族の地位になる法律上の行為をいう。戸主の老衰を理由とする普通隠居の要件は、①隠居者が満60歳以上であること。②家督相続人があって、そのものが単純承認をすること。

隠居に関しては次の点に注意。

・留保財産 隠居者は、その財産の一部を相続させないものとするときは、確定日付のある証書(対抗要件)をもって財産を留保し、相続財産から除外することができた。
・ただし家督相続人の遺留分を侵害することは許されなかった。
・隠居者による不動産の留保は登記することができない。
・隠居者の死亡による留保財産についての相続登記申請に、確定日付のある留保財産である旨の証書の添付は要しない。(登研41)
・財産留保の確定日付の申請は、隠居による家督相続開始前にしなければならない。
・隠居者名義の不動産について、「家督相続」または「遺産相続(隠居者の死亡後または新法後の死亡の場合)」を原因とする所有権移転の登記申請があった場合受理せざるを得ない。ただし、「隠居者が隠居後に取得した財産であることが明らかな場合」には、家督相続による登記の申請は却下すべきである。(大正2.6.30第132号回答)
・隠居者が隠居後の日付の売買を原因とする所有権移転の登記を受けた不動産については、家督相続による登記申請は受理すべきではない。→遺産相続となる。
・隠居者が隠居後に所有権保存の登記を受けた不動産については、(その不動産を取得した時期が明らかではないから)家督相続による所有権移転登記または遺産相続による所有権移転登記のいずれの申請があっても受理して差し支えない。(登研219)
・隠居により家督相続が開始した場合において、当該隠居者が新民法施行後死亡した場合の当該留保財産については新民法が適用される。(登研44)

(参考 兵庫県司法書士会 旧民法)

相続放棄の期間


rental;wikipedia ギリシャの首都アテネの市章 goo.gl/E2EviH

Q 相続放棄はいつまでにしなければならないのか?(相続放棄の期間)

A 相続放棄は、原則として、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述してしなければなりません。相続人が相続の放棄をしないうちに、さらに死亡した時は、死亡した相続人の相続人が、自分のために相続の開始があったことを知った時から起算されます。

1.熟慮期間
相続を放棄するためには、前提として相続財産(積極財産と消極財産)を調査する必要があります。この調査期間を熟慮期間といいます。民法は、この熟慮期間を「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」と定めました。ただし、特別な事情がある場合は、利害関係人の請求により家庭裁判所において熟慮期間を伸長することができます。

2.再転相続人の熟慮期間
たとえばAが死亡し、Aの相続人Bが相続の承認や放棄をしないまま死亡し、Bの相続人CがAの相続人となることを再転相続といいます。この場合の熟慮期間は、相続人の相続人(再転相続人)Cが自分のために相続の開始があったことを知ったときから起算されます。

3.熟慮期間の起算点
熟慮期間の起算点は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とありますが、これをいつとみるべきかの問題があります。判例をみますと、古くは「被相続人の死亡の事実を知ったとき」(大判大10・10・20民録27.1807)とあり(相続原因覚知時説)、のちに、「被相続人の死亡の事実を知っただけでなく、それによって自分が相続人となったことを覚知したとき」(大決大15.8.3民集5.10.679)(相続人覚知時説)と改めました。その後も、これを起算日とする判例は少なくありません。しかし相続財産の認識がない場合には熟慮期間は進行しないとするもの(東京家審昭47.6.2家月25.5.50)等や、特段の事情があるときは、熟慮期間経過後であっても相続財産の存在を知った後、遅滞なく限定承認ないし放棄することが許されるとしたもの(東京高決昭57.9.27家月35.11.89)等々、相続財産の認識がない場合に熟慮期間は進行しないとするものが多くなってきました。そして最高裁は昭和59年に新しい判断を示しました。すなわち「相続人において相続開始の原因となる事実およびこれにより自己が相続人となった事実を覚知したときから3カ月以内に限定承認または放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との交際状態、その他諸般の状況からみて、当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において、このように信じることにつき相当な理由がある場合には、熟慮期間は、相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である」としました。したがって、借金等の相続債務の存在についても、相当な理由がある場合には、熟慮期間が延長される場合が考えられます。

4.熟慮期間の計算
熟慮期間の起算点については、民法の原則どおり初日は算入しません。

参考 相続における承認・放棄の実務(新日本法規)

民法改正 不確定期限における履行遅滞


rental;wikipedia アルメニアの国章goo.gl/tSrt2B

不確定期限における履行遅滞(民法第412 条第2項関係)

不確定期限における履行遅滞の規律を次のように改めるものとする。

【改正案】改正
債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

【現行】
債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。

【ポイント】
解釈の明文化
債務者が期限の到来を知らずに、債権者から請求を受けた場合でも遅滞の責任は生ずる。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料