民法改正 損害賠償の範囲


rental;wikipedia コンゴ民主共和国 キンシャサの市章→goo.gl/4Zi1Kd

 

損害賠償の範囲(民法第416条)

 

民法第416条の規律を次のように改めるものとする。

 

【改正】
第1項 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。(改正前と変わらず)
第2項 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

改正前の第2項 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

 

【ポイント】
債務者が現に予見していたかどうかにかかわりなく、規範的な評価を問題とする趣旨。

契約の締結後に債権者が債務者に対してある特別の事情が存在することを告げさえすればその特別の事情によって生じた損害が全て賠償の範囲に含まれるというのではなく、債務者が予見すべきであったと規範的に評価される特別の事情によって通常生ずべき損害のみが賠償の範囲に含まれる。

 

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料(抜粋)

相続放棄と生命保険

rental;wikipedia エリトリアの国章

Q 相続放棄すると生命保険金は受け取ることができないのですか?

A 相続放棄をした場合でも、受取人の指定されている生命保険の死亡保険金は、もともと受取人がもっていた固有の権利とされています。よって受取人に指定されている相続人が相続放棄しても受け取ることができます。ただし、生命保険の受取人として、「亡くなられた方ご自身」を指定している場合は、相続放棄をすると生命保険を受け取ることはできなくなります。放棄した相続人は、その相続については、初めから相続人とならなかったものとみなされます。同順位の一人が相続放棄すれば、他の同順位の相続人の相続分が増え、同順位の者がいなければ、次順位の相続人が相続人となります。配偶者や第2、第3順位の相続人もすべて相続放棄した場合は相続人不存在となります。

【生命保険金は遺産(相続財産)なのか】
相続人が、熟慮期間内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすると、相続人は相続開始時に遡って相続人でなかったものとみなされます。従って、生命保険金が遺産に含まれる場合は、生命保険の死亡保険金を受け取ることはできません。
相続放棄をした場合の死亡保険金の扱いで重要なポイントとなるのは、その死亡保険金の受取人が誰なのかということです。受取人が被相続人となっている場合は、死亡保険金は被相続人の遺産となり、相続放棄をした相続人は、かかる保険金は受け取れません。これは被相続人が保険契約者でなくても、被相続人が保険金受取人に指定されていれば同様です。 しかし受取人が相続放棄した相続人に指定されている場合は、相続放棄をしても死亡保険金を受け取ることができます。また、受取人に特定の相続人が指定されている場合だけでなく、単に受取人を「相続人とか法定相続人」などと指定されている場合であっても同様です。

相続放棄後の遺産

rental;wikipedia キューバの国章→goo.gl/5sjn8f

Q 相続放棄をしたら遺産はどうなるか?

A  放棄した相続人は、その相続については、初めから相続人とならなかったものとみなされます。同順位の一人が相続放棄すれば、他の同順位の相続人の相続分が増え、同順位の者がいなければ、次順位の相続人が相続人となります。配偶者や第2、第3順位の相続人もすべて相続放棄した場合は相続人不存在となります。

【相続放棄後の相続人の不存在】
すべての相続人が相続放棄をすると、相続資格のある相続人がいない状態となり、相続財産を誰が管理し引き継ぐのかが問題となります。
そもそも、相続人は、相続放棄をするまでの熟慮期間中も、自己の固有の財産におけると同一の注意をもって、相続財産を管理する必要があります。これは財産の帰属が確定するまでの不安定な状態から問題が生じないよう相続人に課せられた義務です。そして同様に、相続放棄後も管理を引き継ぐべき者が管理を開始するまで、自己の固有の財産におけると同一の注意をもって、相続財産を管理する必要があります。これは、相続放棄によって生じる管理の空白期間に、相続債権者その他の利害関係人の利益を害することのないよう課せられた義務です。よって、他に共同相続人がいる場合は、その者が管理を開始してはじめて、相続放棄した相続人の管理義務が消滅します。すべての相続人が相続放棄した場合には、民法951条により、相続人があることが明らかでないときに該当し、同952条により相続財産管理人を選任し、管理を引き継ぐこととなります。同条の要件は①相続開始後、②相続財産が存在し、③相続人のあることが明らかでない場合に、④利害関係人または検察官の申立てに基づいて、⑤必要性がある場合は、家庭裁判所によって、相続財産管理人が選任されます。なお、申立人となりうる利害関係人には、相続放棄した相続人も含まれます。

【相続財産管理人関係事件における手続きの流れ】
手続きは資産超過型(被相続人のプラスの財産がマイナスの財産より多いケース)のスキームと、債務超過型(被相続人のマイナスの財産がプラスの財産より多いケース)のスキームがあります。実務では債務超過型の事件が比較的多いように感じます。もし弁済後も積極財産が残る場合は、資産超過型となり、引き継ぎのための手続きと相続人捜索のため長期間の公告等を必要とします。おおまかな流れは次のとおりです。
①家庭裁判所に対する相続財産管理人選任の申立て
②相続財産管理人を選任した旨の官報公告
③相続債権者及び受遺者に対する請求申出の官報公告
※債権者等への清算が必要であれば、相続財産を換価し弁済しあるいは配当する。債務超過型であれば、ここで管理は終了する。
資産超過型となりますとさらに以下の手続きが必要となります。
④相続人の捜索の官報公告(6ケ月以上の期間を要する)
⑤特別縁故者に対する財産分与の申立て
※上記④の期間の経過により相続人の不存在が確定すると、特別縁故者に対する財産分与の申立て、すなわち相続人ではないけれども特別の関係にある者→例えば、「被相続人と生計を同じくしていたもの」「療養看護に努めたもの」等の申立てがある場合、相当であるかにつき財産管理人の意見を家庭裁判所に申述する。
⑥分与の審判もしくは申立却下の審判
⑦特別縁故者に対する分与財産の引渡し
⑧残余財産の国庫への引継
⑨管理事務終了

相続財産管理制度については、こちらのコラムも、ご覧ください。→マイベストコラム【相続人不存在】

参考 新日本法規 相続における承認・放棄の実務

相続放棄の熟慮期間伸長

rental;wikipedia アイルランドの首都ダブリンの市章→goo.gl/FYecdU

Q 3ケ月以内に相続放棄するかどうか判断できない場合はどうしたらよいか?(熟慮期間の伸長)

A 熟慮期間である3ケ月以内に承認もしくは放棄するかの判断ができない場合に、特別な事情がある場合は、利害関係人または検察官の申立てにより、家庭裁判所において、その熟慮期間を伸長することができます。特別な事情とは、相続財産が分散している、相続財産の構成が複雑である、あるいは被相続人の債務が不明であるなどの理由により、相続財産の調査や承認または放棄の選択考慮が3ケ月では困難な場合をいいます。

【手続き】
申立人
 利害関係人 (相続人、相続債権者、受遺者、相続人の債権者、次順位の相続人等)
相続人は、他の相続人の熟慮期間の伸長を求めることもできます。
 検察官

申立先(管轄)
 相続が開始した地(被相続人の最後の住所地)の家庭裁判所

申立てに必要な書類
 1.被相続人の住民票除票又は戸籍附票
 2.利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証する資料(親族の場合,戸籍謄本等)
 3.伸長を求める相続人の戸籍謄本
 審理に必要な場合、追加書類を求められることがあります。

申立期間
 相続開始後、熟慮期間の経過しない間に申立てする必要があります。

家庭裁判所ウェブページ記載例はこちら

伸長期間
 伸長される熟慮期間は、事情に応じ裁判所が決定します(通常3ヶ月、事案により半年程度)。 場合により再度の伸長の申立てをすることができます。

参考 新日本法規 相続における承認・放棄の実務

民法改正 代償請求権

rental;wikipedia ジョージアの国旗goo.gl/KsMzCm

代償請求権(民法第422条の2)

代償請求権について、次のような規律を設けるものとする。

【新設】第422条の2 債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転又はその利益の償還を請求することができる。

【ポイント】
判例明文化(最判昭和41年12月23日)

債権者は、代償請求権と填補賠償請求権のどちらを選択しても可。 債務不履行につき、債務者の免責事由の有無は、代償請求権の要件から除外されている。これは、債務者に支払能力がない場合や、資産を隠匿された場合等から債権者を保護することを重視したものである。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料

民法改正 履行遅滞中の履行不能

rental;wikipedia ウクライナの国章

履行遅滞中の履行不能(民法第413条の2)

履行遅滞中の履行不能について、次のような規律を設けるものとする。

【新設】
第413条の2 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

【ポイント】
判例明文化(大判明治39 年10 月29日)
債務不履行による損害賠償責任の免責事由として民法第415条により、債務者の責めに帰することのできない場合、債権者は損害賠償請求ができないと定められている。では、履行遅滞になった後、債務者の責めに帰することのできない事由によって履行不能になった場合、損害賠償請求が可能なのか、との疑問に対し債務者の責めに帰すべき事由によって履行不能になったものとみなすというルールを定めた。つまり免責事由のない履行不能も、履行遅滞が前提として生じれば、帰責事由ありとなり、責任を負わなければならない。

【参考】受領遅滞中の履行不能
第2項 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料

未成年者の相続放棄

rental;wikipedia トルコの首都アンカラの市章

Q 相続人が未成年者等である場合の相続放棄はどのようにするのか?(未成年者の相続放棄)

A 未成年者の法律行為は法定代理人である親権者が代わりに行うのが原則です。ただし、親権者と未成年者との間で利益が相反する場合は、家庭裁判所に申し立てて特別代理人を選任しなければなりません。もっとも、親権者自身も同時に相続放棄する場合は、法定代理人として未成年者のために相続放棄することができるとされています。熟慮期間の起算点は、法定代理人が未成年者のために相続の開始があったことを知った時から起算されます。相続人が成年被後見人である場合も同様です。ただし成年後見監督人が選任されている場合は、かかる監督人が被後見人に代わって放棄することになり、特別代理人の選任は不要です。なお、後見人が被後見人より先もしくは同時に相続放棄する場合でも後見監督人の同意が必要です。相続人が被保佐人である場合は、特別代理人の選任は不要です。民法13条6号により、被保佐人は保佐人の同意を得て相続の承認・放棄をすることができるからです。

特別代理人の選任申立手続き(親子間の利益相反)
利益相反(親子間の利害の衝突)の判断は、客観的、外形的に考察すべきであり、親権者の動機や意図に基づいて判定すべきではないとされます。
申立人 親権者、後見人、子の親族その他の利害関係人
管轄  子(未成年被後見人)の住所地の家庭裁判所
添付  ①親権者 ②子の戸籍謄本 ③特別代理人候補者の戸籍謄本 ④利益相反に関する資料(遺産分割協議書案、契約証書案など)

家庭裁判所ウェブページ特別代理人選任申立書記載例はこちら

【参考】
◆家庭裁判所での相続放棄の申述の受理は、一応の公証を意味するに止まり、相続の放棄が有効か無効かを終局的に確定するものではなく、その有効か無効かは民事訴訟法による裁判によってのみ終局的に解決するものである。(東京高判昭27・11・25)

◆共同相続人により相続登記後その一部が相続を放棄した場合、残余の相続人において相続放棄を登記原因として放棄者に対し、その持分の移転登記を求めることができる。(東京地昭31・9・26判決)

◆配偶者と数人の子が共同相続人である場合に、この一部が相続を放棄したときは、放棄した子の相続分は他の相続人である残りの子と配偶者とに相続分に応じて帰属すると解するのが正当である。(最高昭43・2・27三小判決)

参考 新日本法規 相続における承認・放棄の実務

旧民法 「隠居と家督相続」


rental;wikipedia,三朝温泉温泉本通り

隠居と家督相続

【家督相続】
・家督相続とは、旧法における「家」の相続。戸主の交替。
・家督相続の効果として、家長である戸主の地位を承継する。当然に「家」の財産全部を受け継ぐ。
・家督相続の開始原因は死亡相続と生前相続(隠居・去家・女戸主の入夫婚姻など)。

以上を踏まえて・・・・

【隠居】とは
戸主が自ら戸主の地位を退き、家族の地位になる法律上の行為をいう。戸主の老衰を理由とする普通隠居の要件は、①隠居者が満60歳以上であること。②家督相続人があって、そのものが単純承認をすること。

隠居に関しては次の点に注意。

・留保財産 隠居者は、その財産の一部を相続させないものとするときは、確定日付のある証書(対抗要件)をもって財産を留保し、相続財産から除外することができた。
・ただし家督相続人の遺留分を侵害することは許されなかった。
・隠居者による不動産の留保は登記することができない。
・隠居者の死亡による留保財産についての相続登記申請に、確定日付のある留保財産である旨の証書の添付は要しない。(登研41)
・財産留保の確定日付の申請は、隠居による家督相続開始前にしなければならない。
・隠居者名義の不動産について、「家督相続」または「遺産相続(隠居者の死亡後または新法後の死亡の場合)」を原因とする所有権移転の登記申請があった場合受理せざるを得ない。ただし、「隠居者が隠居後に取得した財産であることが明らかな場合」には、家督相続による登記の申請は却下すべきである。(大正2.6.30第132号回答)
・隠居者が隠居後の日付の売買を原因とする所有権移転の登記を受けた不動産については、家督相続による登記申請は受理すべきではない。→遺産相続となる。
・隠居者が隠居後に所有権保存の登記を受けた不動産については、(その不動産を取得した時期が明らかではないから)家督相続による所有権移転登記または遺産相続による所有権移転登記のいずれの申請があっても受理して差し支えない。(登研219)
・隠居により家督相続が開始した場合において、当該隠居者が新民法施行後死亡した場合の当該留保財産については新民法が適用される。(登研44)

(参考 兵庫県司法書士会 旧民法)

相続放棄の期間


rental;wikipedia ギリシャの首都アテネの市章 goo.gl/E2EviH

Q 相続放棄はいつまでにしなければならないのか?(相続放棄の期間)

A 相続放棄は、原則として、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述してしなければなりません。相続人が相続の放棄をしないうちに、さらに死亡した時は、死亡した相続人の相続人が、自分のために相続の開始があったことを知った時から起算されます。

1.熟慮期間
相続を放棄するためには、前提として相続財産(積極財産と消極財産)を調査する必要があります。この調査期間を熟慮期間といいます。民法は、この熟慮期間を「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」と定めました。ただし、特別な事情がある場合は、利害関係人の請求により家庭裁判所において熟慮期間を伸長することができます。

2.再転相続人の熟慮期間
たとえばAが死亡し、Aの相続人Bが相続の承認や放棄をしないまま死亡し、Bの相続人CがAの相続人となることを再転相続といいます。この場合の熟慮期間は、相続人の相続人(再転相続人)Cが自分のために相続の開始があったことを知ったときから起算されます。

3.熟慮期間の起算点
熟慮期間の起算点は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とありますが、これをいつとみるべきかの問題があります。判例をみますと、古くは「被相続人の死亡の事実を知ったとき」(大判大10・10・20民録27.1807)とあり(相続原因覚知時説)、のちに、「被相続人の死亡の事実を知っただけでなく、それによって自分が相続人となったことを覚知したとき」(大決大15.8.3民集5.10.679)(相続人覚知時説)と改めました。その後も、これを起算日とする判例は少なくありません。しかし相続財産の認識がない場合には熟慮期間は進行しないとするもの(東京家審昭47.6.2家月25.5.50)等や、特段の事情があるときは、熟慮期間経過後であっても相続財産の存在を知った後、遅滞なく限定承認ないし放棄することが許されるとしたもの(東京高決昭57.9.27家月35.11.89)等々、相続財産の認識がない場合に熟慮期間は進行しないとするものが多くなってきました。そして最高裁は昭和59年に新しい判断を示しました。すなわち「相続人において相続開始の原因となる事実およびこれにより自己が相続人となった事実を覚知したときから3カ月以内に限定承認または放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との交際状態、その他諸般の状況からみて、当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において、このように信じることにつき相当な理由がある場合には、熟慮期間は、相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である」としました。したがって、借金等の相続債務の存在についても、相当な理由がある場合には、熟慮期間が延長される場合が考えられます。

4.熟慮期間の計算
熟慮期間の起算点については、民法の原則どおり初日は算入しません。

参考 相続における承認・放棄の実務(新日本法規)

民法改正 不確定期限における履行遅滞


rental;wikipedia アルメニアの国章goo.gl/tSrt2B

不確定期限における履行遅滞(民法第412 条第2項関係)

不確定期限における履行遅滞の規律を次のように改めるものとする。

【改正案】改正
債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

【現行】
債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。

【ポイント】
解釈の明文化
債務者が期限の到来を知らずに、債権者から請求を受けた場合でも遅滞の責任は生ずる。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料