民法改正案 不確定期限における履行遅滞


rental;wikipedia アルメニアの国章goo.gl/tSrt2B

不確定期限における履行遅滞(民法第412 条第2項関係)

不確定期限における履行遅滞の規律を次のように改めるものとする。

【改正案】改正
債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

【現行】
債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。

【ポイント】
解釈の明文化
債務者が期限の到来を知らずに、債権者から請求を受けた場合でも遅滞の責任は生ずる。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料

民法改正案 債務の履行に代わる損害賠償


rental;wikipedia サモアの国章 goo.gl/US3eEK

債務の履行に代わる損害賠償(民法第415条2項関係)

債務の履行に代わる損害賠償の要件について、次のような規律を設けるものとする。

【改正案】新設
前項(民法第415条第1項)の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。

(1) 債務の履行が不能であるとき。
(2) 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
(3) 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

【ポイント】
填補賠償→主に判例の明文化
交換契約でこちらの債務を履行したい場合、継続的供給契約で不履行部分のみを問題とする場合などに実益あり。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料

民法改正案 債務不履行による損害賠償とその免責事由

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rental;wikipedia ソロモン諸島の国章:goo.gl/U3KSoE

債務不履行による損害賠償とその免責事由(民法第415条1項関係)

民法第415条1項の規律を次のように改めるものとする。

【改正案】新設
第415条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

【ポイント】
債務不履行と履行不能の抗弁を明確化、免責事由の立証責任を明確化。いずれも「~債務者の責め」でないことを債務者が証明すれば責任を免れる。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料  

民法改正案 履行請求権等

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rental;wikipedia : バチカンの国章→goo.gl/xgI5Rl

履行の不能

履行の不能について、次のような規律を設けるものとする。

【改正案】新設
第412条の2 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。

【ポイント】基本的ルールを明文化。任意規定である。「債権者は債務者に対して、その債務の履行を請求することができる」が大前提。「不能であるとき」とは、原始的不能と後発的不能とを区別しない。不能が債務者の責めに帰すべきものであれば、債務者は履行に代わる損害賠償債務を負担し、債務者の責めに帰することができないものであれば、債務者は反対給付を受ける権利を失う。(ただし、債権者の責めに帰すべきものであるときは、なお反対給付を受ける権利を有する。)

履行の強制(民法第414条関係)

民法第414条第1項の規律を次のように改めるものとする。

【改正案】
第414条 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、損害賠償の請求を妨げない。

【ポイント】直接強制に限られないことを明示。
現行2項と3項は、民事執行法に一元的に規律。代替執行や意思表示の擬制は民事執行法に置いた方が民法と民事執行法の役割分担が明確になる。

【参考】現行第414条2項、3項→削除
2 債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、法律行為を目的とする債務については、裁判をもって債務者の意思表示に代えることができる。
3 不作為を目的とする債務については、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすることを裁判所に請求することができる。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料

民法改正案 法定利率2

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rental;wikipedia : グアテマラ共和国の国章 goo.gl/DofwW6

金銭債務の損害賠償額の算定に関する特則(民法第419条第1項関係)

民法第419条第1項の規律を次のように改めるものとする。

【改正案】
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

【改正前】
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

中間利息控除

中間利息控除について、次のような規律を設けるものとする。

【改正案】新設 判例(最判平成17年6月14日)の明文化か?
第417条の2 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。

民法改正案 法定利率

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rental;wikipedia キプロスの国章 goo.gl/Yty72A

変動制による法定利率(民法第404条関係)民法第404条の規律を次のように改めるものとする。

【改正案】
第404条利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。

2 法定利率は、年3パーセントとする。

3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに、次項の規定により変動するものとする。

4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。

5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12 月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(その割合に0・1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

(注)この改正に伴い、商法第514条を削除するものとする。

【現行】
第404条利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする。
(参考)商法第514条商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年6分とする。

【ポイント】現行は年5%(商事法定利率年6%)の固定制である。法定金利と実勢金利の乖離が大きいことから、固定制を廃止して短期(貸付期間が1年未満)の市場金利に連動する変動制になる。ただし、3年毎に見直しが行われるため、市場金利に比べて変動の頻度は少ないものとなる。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料

民法改正案 選択債権

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rental;wikipedia フィジーの国章 https://goo.gl/7UzvY7

債権の目的(法定利率を除く。)

2 選択債権(民法第410条関係)民法第410条の規律を次のように改めるものとする。

【改正案】
債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在する。

【現行】
第410条 債権の目的である給付の中に、初めから不能であるもの又は後に至って不能となったものがあるときは、債権は、その残存するものについて存在する。
2 選択権を有しない当事者の過失によって給付が不能となったときは、前項の規定は、適用しない。

【ポイント】
現行法は、原則として、残存債権のみとし、選択権を有しない当事者の場合を例外規定(不能債権(損害賠償・解除)を選択可)とした。しかし、当事者双方無過失の場合も選択権者の選択権を維持しておくべきとの批判があった。そこで、選択権者に過失有の場合は残存債権のみとし、それ以外(当事者双方が無過失の場合を含む)は、残存債権か、不能債権(損害賠償・解除)かを選択可能とした。なお、原始的不能と後発的不能との区別は廃止した。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料

民法改正案 特定物の引渡しの場合の注意義務

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rental;wikipedia オーストラリアの国章https://goo.gl/MHnmJX

債権の目的(法定利率を除く。)

1 特定物の引渡しの場合の注意義務(民法第400 条関係)民法第400条の規律を次のように改めるものとする。

【改正案】第400条債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

【現行】第400条債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。

【ポイント】付加された部分は「契約の内容(契約書の記載内容等)、契約の性質(有償か無償かを含む)、当事者が契約をした目的、契約の締結に至る経緯を始めとする契約をめぐる一切の事情等を考慮し、取引通念をも勘案して、評価、認定される契約の趣旨」という意味。本規律の「善管注意義務」は、契約の文言等の客観的事情のみで定まるものではない。現行法下と同じく任意規定である。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料

民法改正案 時効の援用

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rental;wikipedia インドの国章 https://goo.gl/1yU6H0

消滅時効について、民法第145条の規律を次のように改めるものとする。
【改正案】
第145条
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

【現行】
時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

【ポイント】当事者に該当する例ついて判例を明文化
(保証人につき大判昭和8年10 月13 日、連帯保証人につき大判昭和7年6月21 日、物上保証人につき最判昭和43 年9月26 日、抵当不動産の第三取得者につき最判昭和48 年12 月14 日、売買予約の仮登記に遅れる抵当権者最判平成2年6月5日、仮登記担保の設定された不動産の第三取得者につき最判平成4年3月19日、詐害行為の受益者につき最判平成10 年6月22 日)(当事者に該当しない例として、一般債権者につき大判大正8年7月4日、後順位抵当権者につき最判平成11 年10 月21 日)→ 「権利の消滅につき直接利益を受ける者」という基準は曖昧なので文言として用いず。

参考 日本司法書士会連合会 民事法改正対策部資料

民法改正案 時効の完成猶予及び更新

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rental;wikipedia イタリアの国章 https://goo.gl/ySIbyT

時効の中断事由(民法第147条ほか)及び停止事由について、同法第158条から第160条までの規律を維持するほか、次のように改めるものとする。

【改正案】
(1) 裁判上の請求等
第147条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法(平成8年法律第109号)第275条第1項の和解又は民事調停法(昭和26年法律第222号)若しくは家事事件手続法(平成23年法律第52号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

(2)強制執行等
第148条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 強制執行
二 担保権の実行
三 民事執行法(昭和54年法律第4号)第195条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
四 民事執行法第196条に規定する財産開示手続
2 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。

(3)仮差押え等
第149条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
一 仮差押え
二 仮処分

(4)強制執行等及び仮差押え等による時効の完成猶予及び更新の効力
第154条 第148条第1項各号又は第149条各号に掲げる事由に係る手続は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、第148条又は第149条の規定による時効の完成猶予又は更新の効力を生じない。

(5)承認
第152条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。

(6)催告
第150条 催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、アの規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

(7)天災等による時効の完成猶予
第161条 時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第147条第1項各号又は第148条第1項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から3箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

(8)協議による時効の完成猶予
第151条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から1年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方が相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第1項の合意は、時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4 第1項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、ア、ウ及びエの規定を適用する。
5 前項の規定は、第1項第3号の通知について準用する。

【ポイント】

現行民法147条の時効「中断」事由は、「請求」(1号)「差押、仮差押え又は仮処分」(2号)「承認」(3号)がある。「請求」には「裁判上の請求」(149条)「支払督促の申立」(150条)「和解又は調停の申立て」(151条)「破産手続参加等」(152条)がある。「中断」後の時効の進行について、現行は「中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める」と定め、2項は「裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める」と定めている。この「新たにその進行を始める」こと(リセット)を「更新」と言う。
他方、現行民法149条から152条、及び154条は、各手続が途中で頓挫した場合「中断の効力を生じない」としている。
つまり、現行民法147条の「中断」事由には「更新」となる場合と、「中断の効力」が生じない場合があることになる。

そこで改正案では、「時効の完成が妨げられる」という効力(153条参照)と「それまでに進行した時効が全く効力を失い、新たな時効が進行を始めるという効力」(157条)を区別し、前者を「完成猶予」、後者を「更新」とした。かつ、裁判上の催告に関する判例法理を明文化する提案をしている。