民法35「隠居と家督相続」

 
rental;wikipedia,三朝温泉温泉本通り 
 
隠居と家督相続

【家督相続】
・家督相続とは、旧法における「家」の相続。戸主の交替。
・家督相続の効果として、家長である戸主の地位を承継する。当然に「家」の財産全部を受け継ぐ。
・家督相続の開始原因は死亡相続と生前相続(隠居・去家・女戸主の入夫婚姻など)。

以上を踏まえて・・・・

【隠居】とは
 戸主が自ら戸主の地位を退き、家族の地位になる法律上の行為をいう。戸主の老衰を理由とする普通隠居の要件は、①隠居者が満60歳以上であること。②家督相続人があって、そのものが単純承認をすること。

 隠居に関しては次の点に注意。

・留保財産 隠居者は、その財産の一部を相続させないものとするときは、確定日付のある証書(対抗要件)をもって財産を留保し、相続財産から除外することができた。
・ただし家督相続人の遺留分を侵害することは許されなかった。
・隠居者による不動産の留保は登記することができない。
・隠居者の死亡による留保財産についての相続登記申請に、確定日付のある留保財産である旨の証書の添付は要しない。(登研41)
・財産留保の確定日付の申請は、隠居による家督相続開始前にしなければならない。
・隠居者名義の不動産について、「家督相続」または「遺産相続(隠居者の死亡後または新法後の死亡の場合)」を原因とする所有権移転の登記申請があった場合受理せざるを得ない。ただし、「隠居者が隠居後に取得した財産であることが明らかな場合」には、家督相続による登記の申請は却下すべきである。(大正2.6.30第132号回答)
・隠居者が隠居後の日付の売買を原因とする所有権移転の登記を受けた不動産については、家督相続による登記申請は受理すべきではない。→遺産相続となる。
・隠居者が隠居後に所有権保存の登記を受けた不動産については、(その不動産を取得した時期が明らかではないから)家督相続による所有権移転登記または遺産相続による所有権移転登記のいずれの申請があっても受理して差し支えない。(登研219)
・隠居により家督相続が開始した場合において、当該隠居者が新民法施行後死亡した場合の当該留保財産については新民法が適用される。(登研44)

民法34「家督相続⑪」


rental;wikipedia,湯布院共同温泉 

家督相続と登記

・ 戸主死亡による家督相続は登記が第三者対抗要件であるか否かは意見がわかれている。隠居相続生前相続の場合を含めて家督相続人の単独申請による。
・ 家督相続人である乙が甲からの家督相続の届出をしないまま死亡してしまった場合、乙の相続人全員からの「乙の甲に対する家督相続の届出」は受理される。(昭41・9・16民甲2566回答)
・ 家督相続人乙が相続登記後に、失踪宣告により被相続人甲の死亡前に死亡したとみなされ、戸籍上家督相続の記載を削除された場合に、新たな家督相続人となった丙又はその相続人の一人は、乙の遺産相続人を登記義務者として、乙の家督相続による登記を抹消し、丙名義に家督相続の登記ができる。(登記研究445・107)

民法33「家督相続⑩」


rental;wikipedia,「城崎温泉/絵葉書」https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kinosaki_onsen.jpg

家督相続と戸籍編成

旧戸籍法の規定による家督相続人からの届出があれば、その旨の記載がなされ、新しい戸主のために新戸籍が編成される。

死亡による家督相続の場合の記載例
明治31年式戸籍では「戸主の氏名欄、左側面に戸主となった年月日・事由」この際の戸主となった年月日とは「相続放棄のできない法定推定家督相続人の場合は前戸主の死亡年月日」「相続放棄をすることができる家督相続人の場合は相続承認の年月日」とされていたが、大正3年式戸籍では前戸主の死亡の年月日に統一された。なお、この場合の従前の戸籍の記載は、市区町村長限りの職権により訂正することが認められていた。

参考 旧法(明治民法)兵庫県司法書士会

 

民法改正案 生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効

英国
rental;wikipedia イギリスの国章 https://goo.gl/48s5Hc

生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効

人の生命又は身体の侵害による損害賠償の請求権について、次のような規律を設けるものとする。

【改正案】新設
(1)第724条の2 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。

(2)第167条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第2号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする。

【ポイント】
(1)不法行為に基づく損害賠償請求権の主観的起算点からの消滅時効期間。債務不履行は短期化。不法行為は長期化。
(2)債務不履行に基づく損害賠償請求権の客観的起算点からの消滅時効期間。債務不履行は長期化、不法行為は期間変わらず。

本規律は724条の重要な特則となる(生命・身体は重要な法益であるため)。
①不法行為による損害賠償請求だけでなく、債務不履行による損害賠償請求も含む。
②債権者側・債務者側双方の利害を考慮。
③労働契約における安全配慮義務違反の事案で、債務不履行の損害賠償請求に影響。⇒ 労働契約における安全配慮義務違反の事案につき、時効期間によって法律構成を変える必要がなくなる。

参考 日本司法書士会連合会民事法改正対策部資料

民法32「家督相続⑨」

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rental;wikipedia, the free encyclopedia https://en.wikipedia.org/wiki/File:Weimar_Constitution.jpg

家督相続

【第三順位 「第一種選定家督相続人」~選定された者】
法定または指定家督相続人がいない場合、相続開始後に選定され、被選定者から家督相続の届出ある場合に効力が生ずる。
選定権者は、1.前戸主の父 2.前戸主の母 3.親族会
被選定者は、1.被相続人の家族であり、「家女である配偶者」※出生あるいは養女として縁組夫より先にその家の在った配偶者 2.兄弟 3.姉妹 4.家女以外の配偶者 5.甥姪

【第四順位 「第二種法定家督相続人」~家族である直系尊属】実親子に加え、養親子、継親子。嫡母庶子を含む】

【第五順位 「第二種選定家督相続人」~被相続人の親族、分家の戸主、本家分家の家族、あるいは他人の中から親族会が選定した者】

引用 兵庫県司法書士会版 旧民法

民法31「家督相続⑧」

 

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家督相続
【第二順位 「指定家督相続人」~前戸主が生前に又は遺言で指定した者】
第一順位の法定で定める推定家督相続人がいないか、被相続人の子や孫がいても、その者が欠格や廃除により資格を有しない場合において、死亡または隠居による家督相続の場合にのみ認められる。(旧979)
被指定者の資格 1.家族の他、他家の戸主やその推定家督相続人でも認められる。胎児を指定することも許された。被指定に拘束力はなく、指定されたものが相続開始後に承認・放棄することは自由であった。
家督相続人指定の戸籍記載例「被相続人甲(←戸主)の身分事項欄・・・何市何町何番地戸主甲二男何某ヲ家督相続人ニ指定 届出 年月日 受付㊞」
指定は、生前の意思表示又は遺言で取り消すことができた。指定された者が死亡(代襲不可)したとき、相続放棄したとき、又は指定の後戸主に実子の出生や養子縁組など法定の家督相続人があるに至ったとき、その指定の効力は消滅する。胎児を家督相続人に指定した後、男女双子を出生した場合、出生の前後にかかわらず男子に相続権が発生する。

民法30「家督相続⑦」

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廃嫡
嫡子の家督相続権を失わさせるもの。法定の相続人が「素行不良・父子対立・疾病」その他一家を維持していくうえでやむを得ない事由があるときに、親族間の協議によりその者を廃除し、他の者を指定して相続させることを官庁に願い出て許可された場合をいう。

廃除と家督相続
長男が自己の妻の懐胎中に廃除された場合、その長男の子または胎児に、代襲相続権がある。ただし、廃除された後、妊婦とともに分家した場合は、子は父の家に入るため、本家相続権はない。(大5.3.17民390回答)

戸主が長男を廃除し、男養子をした後、廃除当時懐胎していた長男の妻が男児を分娩し、その後戸主の死亡により相続開始した場合、長男の子に代襲相続権がある。

戸主には長男・二男があるが、その長男が廃除された後、廃除前に出生した他家の女子を認知して「庶子」として入籍させていたときは、その庶子女に代襲相続権がある。

民法改正案 代理人の行為能力

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【改正案】
代理人の行為能力(民法第102条関係)
民法第102条の規律を次のように改めるものとする。
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
(注1)民法第13条第1項に掲げる行為(被保佐人がその保佐人の同意を得なければならない行為)に次の行為を加えるものとする。
民法第13条第1項に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること。
(注2)民法第120条第1項の規律を次のように改めるものとする。
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

【現行】
代理人は、行為能力者であることを要しない。

【ポイント】
制限行為能力制度は、制限行為能力者本人(未成年者、被後見人、被保佐人、被補助人)を保護する制度であるが、制限行為能力者が代理人となることを否定するものではない。制限行為能力者が親権者となり法定代理人となることもある。ところで、制限行為能力者に認められている取消権を代理人である制限行為能力者の行為についても認められるのかについては、原則として、代理人としての行為について取消ができなくても本人に影響はなく、本人も制限行為能力者に代理権を与えているのだから保護の必要もないとの考え方がある。そこで制限行為能力者が代理人としてなした行為は制限行為能力を理由に取り消すことができないことを明らかにした。ただし、制限行為能力者が法定代理人である場合において、本人も制限行為能力者である場合については、本人が選任したわけではないので、本人保護の観点から取消権を認める場合を設けた。この場合は代理人も本人も制限行為能力を理由とする取消権が行使可能となる。たとえば、夫が被後見人で妻が後見人のケースで、妻も被後見人となった場合や、未成年者の親権者が被保佐人である場合など。

民法29「家督相続⑥」

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養子縁組と家督相続の関係

養子縁組した男子は、養子縁組したその日に出生した嫡出男子とみなされるため、縁組前の嫡出女子並びに縁組後の嫡出男子に優先する。

戸主甲の妻乙が、懐胎中に男子丙を養子とした後、男子丁を出生した場合の戸主甲死亡による家督相続については、旧法第968条の規定は胎児は出生前でも既に生まれたものとみなし、その利益のため家督相続の開始すべきことを定めたもので、家督相続の順序につき長幼の順序を定める標準を規定したものではないから、養子丙を法定の家督相続人とすべきである。大2・8・22民452回答

戸主が婚姻後に男子を養子とした後、婚姻前に出生した男子につき旧戸籍法第8条の嫡出子出生届をした場合でも、戸主の死亡による家督相続は養子である。昭30・10・13民甲2182回答

戸主が長男を廃除し、男養子をした後、廃除当時懐胎していた長男の妻が男児を分娩し、その後戸主の死亡により相続が開始した時は、長男の子に代襲相続権がある。大13・6・16民5264通牒

参考文献 先例 親族相続法 小石寿夫 明治民法・旧法 兵庫県司法書士会

民法28「家督相続⑤」

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分家と家督相続の関係

被相続人の直系卑属が、親族入籍あるいは引取入籍によって他家から入ってきた者である場合は、嫡出子または庶子である他の直系卑属のいないときに限り、970条の順位に従って、初めて家督相続人となる。(旧972)

父親が分家した後に、本家にある長男がその分家に親族入籍した場合、かかる分家の法定の推定家督相続人は、父親が分家した際に、随伴入籍した二男であり、長男は家督相続人とならない(なお随伴入籍した二男は分家では長男と表示される)。誤って長男が分家家督相続をしてしまった場合、二男等の家督相続回復請求権は、※時効もしくは除籍期間の経過により消滅する。

三人の男子がいる戸主が、長男の死亡に伴い、分家していた二男の分家を廃家させ親族入籍により復籍させた場合、三男が法定の家督相続人となる。ただし、他家に養子にいった二男が離縁復籍した時は二男が家督相続人となる。

※現行法
(相続回復請求権)
第884条 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする。
⇒20年を判例は、時効、学説は除斥期間と解している。
相続権を侵害された相続人が相続回復請求権を行使する前に死亡した場合
5年⇒相続権を侵害された相続人の相続人が侵害の事実を知った時から進行する。
相続回復請求権は、一身専属性があり、相続人の相続人は、固有の相続回復請求権を有するとする(判例)。
20年⇒相続権を侵害された相続人の相続が開始した時から起算する(判例)。
いずれも個々の財産について各々進行するのではなく、統一的・包括的に進行する。
よって包括的な請求権の行使があった場合、訴訟の目的物とされた財産以外の相続財産についても包括的に時効が中断する。