時効期間
【ポイント】
消滅時効とは、権利(債権)が一定期間行使されないまま過ぎてしまうと、債権者の法的な権利が消滅し請求できなくさせる制度です。相手方が時効を主張し援用することにより成立します。長期間権利を行使できるにもかかわらず放置している債権者なのだから保護するに値しないということから定められました。
これまでの時効期間は、知人からの借金など原則は10年、商取引によって生じた債権は5年、工事の請負代金などは3年、習い事の月謝は2年、飲み屋のツケは1年などと権利の種類によって細分化されていました。しかし一般的な時効期間を10年とするのは長すぎるのではないか、あるいは職業や取引内容によって個別に時効期間を区分するのは、複雑で合理的ではないとの指摘がなされていました。本改正では、これをわかりやすく統一化しようというのがポイントです。
そこで新しい民法では職業別の短期消滅時効(170条~174条)を廃止し、166条に一本化されました。また商法522条の規定が削除され、商事債権の消滅時効(5年)についても廃止されました。新民法166条では、権利を行使することができることを知ったとき(主観的時効期間)から5年間行使しないとき、または権利を行使できるとき(客観的時効期間)から10年間(人の生命・身体に対する損害賠償については20年間)行使しないときのいずれか早く経過することによって消滅するとの二段構えのルールに改められました。(2020年4月1日施行)
【参考法令等】
2020年4月1日施行 民法
第144条(時効の効力)
時効の効力は、その起算日にさかのぼる。
第145条(時効の援用)
時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
第146条(時効の利益の放棄)
時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
第166条(債権等の消滅時効)
1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使し
ないときは、時効によって消滅する。
3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、
その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効
を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
第167条(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。
第168条(定期金債権の消滅時効)
1 定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から十年間行使しないとき。
二 前号に規定する各債権を行使することができる時から二十年間行使しないとき。
2 定期金の債権者は、時効の更新の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認
書の交付を求めることができる。
第169条(判決で確定した権利の消滅時効)
1 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、
十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。