ファイナンシャルプランナーの井上です。
被相続人の居住用財産(空き家)を売却するときの特例のお話をしたいと思います。
土地や建物を譲渡(売却)して収入を得ると、譲渡所得に対して所得税と住民税が課税されます。
譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 |
- 収入金額:売却代金
- 取得費:購入代金や購入手数料などの合計額
※建物の場合は、購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた額になります。
※購入代金が不明な場合などは収入金額の5%相当額を取得費とすることができます。なお、相続や贈与等で取得した不動産であっても、被相続人や贈与者の取得費を引き継ぐことができます。 - 譲渡費用:譲渡するために直接かかった費用
※主なものとして譲渡の際の仲介手数料、印紙代等があります。
売買契約書、領収書の紛失等で取得費の資料がなく、収入金額の5%相当額を取得費として計算した場合、思いのほか高額な譲渡所得が発生してしまうことがあります。
ただし、譲渡所得には各種特例がありますので、ご自身のケースに適用できる特例があるか否か、見逃さないことが重要です。
例えば、
一人暮らしをしていた親が亡くなり、故人の所有する居住用家屋(空き家)の相続が発生しました。相続人には持ち家があり、取得しても故人の居住用家屋(空き家)に住む予定はありません。将来、子や孫が住む可能性も考慮し、このまま空き家の管理をし続けていくか、それとも売却するか悩んでいます。 |
そんな時、
2016年に新設された下記制度がございます。上記のような悩みを抱えている方で、次の特例要件を満たす場合、一度、故人の居住用家屋(空き家)の売却をご検討されてはいかがでしょうか。
◎被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
概要:
相続又は遺贈により取得した被相続人の居住用財産(居住用家屋及び居住用家屋の敷地等)を2016年4月1日から2023年12月31日までの間に売却し、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から一人当たり最高3,000万円まで控除することができます。
主な適用要件
- 1981年5月31日以前に建築された家屋であること。
ただし、区分所有建物登記がされている建物(マンションなど)はこの特例の対象外です。 - 相続開始直前に被相続人の居住のように供されていた家屋で、且つ、被相続人以外に居住者がいなかったこと。(注1)
- 被相続人の居住用家屋(譲渡時に一定の耐震基準に適合するものに限る)を売却または居住用家屋とともに敷地等を売却すること。もしくは、被相続人の居住用家屋除去後、その敷地等を売却すること。
- 相続時から譲渡時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供していないこと。
- 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。(注2)
- 売却代金が1億円以下であること。
(注1)一定の要件を満たし、被相続人が老人ホーム等に入居していた場合を含みます。
国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3307.htm
(注2)相続の開始があった日とは、遺産分割協議が成立し、当該不動産の名義を相続人に書き換えた日ではなく、自己のために相続の開始があったことを知った日です。
特殊な事情がなければ、被相続人の死亡日となるケースが一般的です。
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