【成年年齢の引下げとは】
2022年4月1日に民法第4条に定める成年年齢「年齢20歳をもって、成年とする」から「年齢18歳をもって成年とする」と改正され成年年齢が引下げられることになりました。
「18歳で大人になる」成年年齢の引下げによって何が起きるのか、要点と課題をまとめてみました。
民法の成年年齢の持つ二つの意味
- 契約年齢
▶親等法定代理人の同意なく「一人で」契約を結ぶことができる年齢。
▶通常、未成年者は判断力の成熟過程にあるため親等法定代理人の同意が必要。
▶親等の同意を得ることなく契約した場合、その契約は後から取り消すことができる。=未成年者取消権 - 親権の対象となる年齢
▶未成年の子は父母の親権に服する。
▶親権者は子の住む場所を指定する。
▶親権者は監護や教育に必要な範囲で子を懲戒することができる。
▶親権者は職業の許可や子の財産管理権を有している。
【重大な問題点=成年年齢の引下げにより18歳から未成年者取消権を失う!】
改正にあたり、後記参議院法務委員会付帯決議が、最後の砦として期待されておりましたが、いずれの施策もいまだ不十分な状況にあります。
付帯決議
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/196/pdf/k0801960551960.pdf
未成年者取消権の機能は、契約当時未成年であったことさえ立証できれば、勧誘の態様を問題にすることなく、無条件で取り消すことができる、後戻りができるということ。また、どんな契約をしても取り消される可能性があるので契約勧誘のターゲットとならない予防薬になるという点にあります。
若年成人の消費者被害に陥りやすいトラブルとして、マルチ取引、エステティックサービス、美容医療契約、タレント・モデル契約があります。とりわけ、マルチ取引(ネットワークビジネス)被害は、若年成人に突出しているようです。18歳となりますと、同じクラスや児童養護施設・自立援助ホーム等の中に、救える子と救えない子、加害者と被害者、法律上の大人と子どもが混在する状況が生まれます。
改正後の若年成人の保護方策として、消費者契約法上、判断力不足を念頭に、新たに「つけこみ型不当勧誘」の包括的取消権条項の創設。事業者を取締まる、その他の消費者契約法、特定商取引法、貸金業法や割賦販売法、地方自治行政による監視強化など早急かつ即効性のある法律並びにインフラ整備を強く求めます。
【成年年齢引下げと税金】
〈個人住民税〉
住民税は、「未成年者」のうち前年の合計所得金額が135万円以下の者は非課税となります。この「未成年者」の年齢が、施行から18歳に引き下げられます。
〈未成年者控除〉
法定相続人として相続を受けた場合、20歳未満の場合は、「10万円×20歳に達するまでの年数」が、相続税額から控除されます。改正後は、18歳に達するまでの年数に引き下げられます。
〈相続時精算課税制度〉
60歳以上の贈与者(親、祖父母)から、20歳以上の推定相続人(子または孫)に対して、上限2500万円までの贈与額については、相続が発生するまで納税がスライドされる制度のことですが、受贈者の年齢が18歳以上に引き下げられます。
〈直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例〉
こちらも、18歳に引き下げられます。2年早い段階で、利用が可能になりました。
【未成年後見人の任務の終了】
施行日の時点で、18歳以上20歳未満の方(平成14年4月2日生まれから平成16年4月1日生まれまでの方)は、その日に成年に達することになり、平成16年4月2日生まれ以降の方は18歳の誕生日に成年に達し未成年後見人の任務が終了します。
任務の終了にあたり、後見人は,それまで管理していた未成年者の財産について、管理の計算をし、家庭裁判所に報告し、成人した本人または新しい後見人に財産の引継ぎをして任務が終了します。
【20歳のまま変わらないこと】
飲酒や喫煙、公営ギャンブルに関する年齢制限は、健康被害の心配やギャンブル依存など非行防止等対策の観点からこれまでどおり20歳とされました。また、国民年金の加入義務が生じる年齢も、従来のまま20歳以上となっています。
【日本司法書士会連合会 | 特集~成年年齢引下げと司法書士】
https://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2019/10/201907_02.pdf
〔参考書籍 狙われる18歳 日本弁護士連合会 消費者問題対策委員会〕
【石原法務司法書士事務所】
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