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結婚離婚の法律問題

結婚について

 結婚は人生の中で生起する様々な出来事の中で、最も重要なことのひとつであろうかと思います。昨日まで他人であった男女が、夫婦となり家族となり、たくさんの権利や義務そして手続きが発生します。離婚も同様にいくつもの手続きを経なければなりません。近頃は、より良い結婚をするための婚活とか、有利な離婚をするための離活という言葉が流行しておりますが、そこにはどのような法律問題があるのか、クイズなども交えて考えてみたいと思います。
 まず、結婚とは、どのようなプロセスを経て成立するのか。恋をしたり、お見合いなどをして、家族に報告し、結納や指輪などの儀式を交わすこともあり、そして式を挙げて云々・・・はたして、それで成立したといえるでしょうか。民法によると「結婚(婚姻)は、戸籍法の定めるところによりこれを届け出ることにより効力を生ずる。」と定められています。つまり市区町村の役場に婚姻届を提出し受理されなければ結婚したことにならないということであります。当然のことながら虚偽の届け出に基づくものであれば無効となるとこはいうまでもありません。しかし、悲しいことに最近は虚偽の婚姻が増加していて、不法入国の手段になるなど社会問題となっています。従って、婚姻は届け出があり且つ男女双方に婚姻するとの意思の合致があり、後述するいくつかの婚姻規制をクリアしてはじめて、有効に成立するということになります。そしてもちろん意思の合致といっても、ただ合意するのではなく、憲法の精神の則り、平等の権利を有することを基本として自覚し、互いに協力し合って維持されなければならないとの理念をもってなされることが大切であるということなのであります。

ここでクイズをひとつ・・
事例クイズ1 未成年者の婚姻と離婚

Q 幸子さんは大学の法学部に入学して間もなく同学部の幹夫さんと結婚をしました。ともにまだ18歳という若さです。二人は反対していた両親をなんとか説得して晴れて入籍したというわけです。ところが半年も過ぎた頃から、二人は喧嘩ばかり。どうも相性が悪いようです。いよいよ覚悟を決めた幸子さんが、両親に相談したところ、結婚するとき以上に反対されてしまいました。そこで問題です。幸子さんは結婚しているとはいえまだ未成年者です。やはり両親の同意がなければ、離婚することはできないのでしょうか?

A 民法737条では、未成年者が婚姻するときに親の同意が必要と定められています。従って未成年者が離婚するときも親の同意は必要なのではと考えがちです。しかし民法753条には成年擬制という条文があり、未成年者が婚姻すると成年に達したものとみなすと定められています。従って幸子さんも、婚姻をして民法上成年に達したものとなるわけですから、親の同意なくして離婚することも可能であるということになります。

 次に、婚姻の成立要件として、届出と意思の存在の他にクリアしなければならない婚姻規制とはどのようなものであるのか。
 まず婚姻適齢というものがあります。民法731条では、「男は満18歳、女は満16歳にならなければ婚姻をすることができない。」としています。そして、前記のとおり民法737条では、「未成年者が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない」となっています。ただし、未成年者が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされるわけですから、成人と同様に契約などの法律行為ができるようになります。そしてこの効果は離婚をしても消滅することはありません。もちろん、公法にかかる、公職選挙法や未成年者飲酒禁止法、未成年者喫煙禁止法において成人にみなされることは、いうまでもなくありません。

(未成年者の婚姻と父母の同意)
未成年の子が婚姻をするときは、父母の同意を得なければならない。父母の一方が同意しないときは他の一方だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも同様とするとあります。 もっと具体的にいいますと、父母つまり両親のいる未成年者が婚姻をするときは、その両親の同意が必要である。但し、父母の一方が同意しないとき、例えば父親はダメだといっているが、母親は「しょうがない」などと思っているときは、その母親の同意だけでもいいですよということになります。ただ、この同意の面倒なところは、例えば、里親さんがいらっしゃる場合や未成年後見人がついている場合、あるいは施設長がいらっしゃる場合であっても、養子縁組していない限り、実の父母もしくは少なくとも父母のどちらかの同意が必要であるというところにあります。 これは例えば、親の虐待に遭ってシェルターで暮らす子どもたちなどにとっては、事実上の婚姻障碍となり、自立を伴う成人擬制の大きな弊害となっています。もっとも、過去の事例などを見てみますと、婚姻は適齢に達した男女の合意のみによって成立するとする、最高法規である憲法の規定は、当然制限規定である民法に優先されるべきであるという理由から、一度受理されてしまった婚姻届は、実際には親権者の同意がなかったということを理由に、婚姻を取り消し無効にすることは出来ません。親が出てきて同意はしていないと役所に駆け込んでも、婚姻届が受理されてしまえば、親はどうすることも出来ないということがいえます。当該事例のような届出の偽造はもちろん許されませんが、国家が憲法を取るのか民法を取るのかの問題であって、公文書偽造罪、私文書偽造罪にも問われないというのがこれまでの実務のようです。

 重婚禁止規定という条文もあります。日本の民法では「配偶者のあるものは、重ねて婚姻することができない。」つまり一夫一婦制でなければならないということです。ちなみに、江戸期までは、上流社会において男子の跡取りを生むという名目の元で側室制度というものがありました。

関連して次のクイズを考えてみましょう。
事例クイズ2 直系姻族間の婚姻

Q 幸子さんは、夫と夫の父親の3人で喫茶店を営み暮らしていました。しかし不幸にも夫は3年前にバイク事故で死亡してしまいました。今幸子さんは、創業者である夫の父親(義父)とともに、喫茶店の仕事を続けています。ところで、義父はとても優しく、ダンディな男性で、しかも妻とは離婚しています。年齢も45歳とまだまだ若いです。幸子さんは毎日義父とともに仕事をしているうちに、その義父をいとしいと思うようになり、ともに愛情が芽生えてきました。幸子さんは、できれば義父と結婚したいと願っているのですが、果たして法律上可能なのでしょうか?

A これは、まさに許されざる禁断の愛ですね。幸子さんの気持ちも理解できます。しかし残念ながら日本の法律では、幸子さんと亡き夫の父親が結婚することは許されていないのであります。これは民法735条の直系姻族間での婚姻の禁止規定に基づくもので義理の親子間など「直系姻族の間では婚姻することはできない」と規定されているからです。もしかしたらよくあることかもしれませんが、法律上残念ながら認められておりません。
 このほかにも、再婚禁止期間の定め、すなわち「女性は前根の解消または取り消しの日から6か月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」あるいは近親婚の禁止すなわち「直系血族または三親等内の傍系血族の間では婚姻をすることができない。」などの婚姻規制があります。

離婚について

 まず、最近の離婚率と離婚増加の理由について、統計の方法にもよりますが、日本ではおよそ夫婦の三から四組に一組が離婚しているとあります。そして離婚率はここ20年で急激に伸びているといわれています。増加の理由として、離婚は恥ずべきことではない。女性の経済的自立。男女の価値観のかい離や燃えやすく冷めやすい愛が増えたからなど、いろいろあげられております。
 そこで、離婚するにも、やはり法律上の手続きは大変なのでしょうか。離婚する夫婦の状況にもよりますが、最終的には婚姻の時と同様に離婚届を市町村役場に届け出ることによって終了します。しかしその前後を通じてさまざまな法律問題がかかわってまいります。

 ところで、法律上、離婚には次の3つの種類があります。

①協議離婚 話し合いによる離婚です。離婚の大半はこの協議離婚であります。そして民法763条には、協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができるとあります。後述しますが、離婚の手続き上もっとも重要なポイントになります。

②調停離婚 協議離婚が調わないときに家庭裁判所における調停において、離婚の合意を成立させる手続きです。この際に財産分与をどうするのかということも併せて決めることとなりますが、調停が成立しますと、書記官が調書に記載し確定判決と同様の効力すなわち執行力を有することになります。

③裁判上の離婚 協議離婚も、調停離婚まとまらない場合に、判決によってする離婚手続きです。裁判離婚は、離婚総数の1%程度であり、離婚原因などの要件も限られております。

 離婚を成立させるために清算しなければならないこと。
晴れて?離婚するとなっても、別れた夫婦にはその効果として様々な権利と義務が発生します。今まで生計を共にし財産を築き、子どもをもうけた人もいるわけですから、その後のことはあらかじめきちんと決めておかなければなりません。そこで次に離婚の効果についてお話ししたいと思います。

①慰謝料について 慰謝料とは、相手から受けた精神的苦痛に対して支払われるお金のことをいいます。一般的には、浮気や不倫などの不貞、暴力や虐待・DVなどが慰謝料請求の対象となり、離婚原因としてよく聞かれる「性格の不一致」のようなあいまいな理由では、慰謝料が発生することはまずありません。慰謝料の金額においては、明確な基準や相場はなく、あくまでケースバイケースで決まると思われます。なお、慰謝料の請求ができるのは、離婚から3年以内となります。また、不貞行為(肉体関係を伴う浮気や不倫)が原因で離婚に至った場合には、不貞行為の相手方に対しても慰謝料請求が可能な場合があります。

②財産分与について 夫婦の一方に不貞が仮にあってもそれとは関係なく、離婚原因とは無関係に、婚姻期間中かつ同居期間中の夫婦が協力して形成した財産を名義のいかんほ問わず、資産も負債も、夫婦間での協議で分与の額や方法を定めます。資産とは、夫婦で取得した(名義が夫であっても)不動産、預貯金、有価証券、車、貴金属、会員権など。また、住宅ローンなどの借金(負債)も財産分与の対象に含まれるので注意を要します。ただし、婚姻以前からの財産として相続や贈与などで得た固有の財産は分与の対象になりません。

③養育費について 養育費は子が親に対して有する権利であって、仮に同居の母が代理して受領するだけであり、例えば、母の有責で離婚したとしても養育費が消滅したり減額されるということにはなりません。これは元夫と元妻の所得の相関関係に基づくもので、それぞれの所得によって大きく変わります。基本的に20歳までですが、22歳(大学卒業)までという例が多くみられます。

④親権・監護権について これは「子の福祉」を第一に考えて決めることになります。夫婦間の事情は基本的に無関係です。例えば不貞の結果の離婚であってもかかる有責配偶者が親権を持つことに何らの支障はありません。

⑤面接交渉権 慰謝料や養育費の支払いとは独立に、一般的には元夫が父親として有する権利であり、要求があれば拒否することはできません。ただし子の福祉を前提にし、頻度・回数・過ごし方など協議や調停事項として盛り込むことができます。
 日本における離婚は、話し合いを前提とした協議離婚が全体の9割を占めております。従って、慰謝料や財産分与、養育費といった金銭面の取り決めや子の面接交渉に関する事項は公正証書としてきちんと作成されることをお勧めします。口約束や念書といったものは、あまり法的効果もなく、後のもめごとの原因にもなります。その点公正証書で、しかも約束を守らなければ強制執行できるとする(強制執行受諾約款)定めを設けておけば、仮に将来の支払いが滞ったとしても、面倒な裁判を経ることなく、速やかに執行できるというメリットがあります。


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