Sub Note.5

保証人の話  連帯保証と身元保証

はじめに

 保証をめぐるトラブルは、私たちの暮らしの中で数多く発生していて、決して他人事ではありません。親戚や友人から保証を頼まれて困っている人。安易に保証を引き受けて困っている人。実際に保証人になって債権者から厳しい取り立てを受けている人。トラブルの形も様々です。私も、日々の業務において、事業者ローンや住宅ローンに関する保証のトラブル、アパート・マンションなどの賃貸借契約における保証人トラブル、消費者金融やクレジット契約上の保証人として債務を背負い自己破産せざるを得なくなった方を数多く見てまいりました。
 そこで、保証人の立場からみた保証人救済の解説を、事例をもとに考えてみたいと思います。

事例検討

 債務者を甲、保証人を乙として、乙は高校の同級生である友人の甲から保証人になってほしいと頼まれました。乙が事情を尋ねると、甲が個人で経営する販売店の営業資金として、銀行から300万円の借入れを申込みたいので、保証人になって欲しいとのこと。絶対に迷惑をかけないとの念書も書くし、事業も順調で形だけのものだからと懇願されました。乙は迷いましたが、甲とは古い付き合いでもあるし親友でもあるので、しぶしぶ保証人を引き受けました。しかも契約書には連帯保証人と書いてありましたが、あまり意味も考えずにサインをしてしまいました。ところが3年後甲は事業に失敗し店じまいをしてしまったのです。結局債務者甲が返済してくれないので、銀行から、連帯保証人である乙に対し多額の支払いの請求書が届いたというわけです。はたして乙はどうしたらよいのでしょうか?

1.保証人とは

 法律上、保証とは主たる債務者(そもそもお金を借りた人)と同一の給付を目的とする従たる債務のことをいいます。そしてその従たる債務者を保証人といいます。つまり、事例で言えば、甲が銀行に対する300万円の借金を支払わなければ、保証人である乙が銀行に対し支払いをしなければならないということになります。つまり保証人がつくということは、銀行の立場であれば、主たる債務者である甲が破産をしたり夜逃げをしたりしても、従たる債務者である保証人乙に対し同じ請求ができるという大きなメリットがあります。また債務者の立場からすれと、銀行から円滑に融資を受けられるというメリットがあります。しかし、保証人にとっては、経済的利益は全くなく重い責任ばかり背負ってしまいます。従って保証人になるかどうかは、くれぐれも慎重に判断しなければなりません。

2.保証責任の種類と違い

 保証責任の種類としては、おもに、普通の保証と連帯保証、普通の保証と根保証、それから身元保証というものがあります。それぞれに分けて考えてみます。

(1) 普通の保証と連帯保証の違い
 普通の保証と連帯保証との決定的な違いは、普通の保証は、主たる債務者がお金を返せなくなったとき、その代わりに返済する義務を負うのに対し、連帯保証は主たる債務者の支払能力の有無にかかわらず債権者に請求された時は、返済しなければならないということにあります。つまり、設問の保証が普通の保証であったとすれば、保証人である乙が銀行から請求を受けたとしても、原則として「まず、主たる債務者である甲に請求しなさい。」ということができます。(主たる債務者が破産宣告・行方不明等をのぞく)ところが、設問に示したような連帯保証契約の場合は、保証人である乙は、主たる債務者甲と同等の責任を負わなければなりません。すなわち、まず債務者である甲に請求してくれということも言えませんし、甲に支払能力があるうちは私は支払いませんということも言えない訳です。なお、我が国の保証契約のほとんどがこの連帯保証契約であるといっても過言ではありません。

(2) 普通の保証と根保証の違い
 普通の保証では、金額や返済期限が定まった特定の債務を保証します。ですから、保証人としては、もし債務者が返済しなかった場合、債権者からどのような請求をうけるか、あらかじめ心づもりをしておくことができます。これに対し、根保証では、将来にわたり何回となく発生する債務を保証することになります。例えば、設問の事例で甲の当初の借り入れは300万円でした。しかしその契約が根保証契約書となっていて、限度額という欄が別にあって3000万とかいてあれば、乙は、期限までのその後の甲の借り入れも3000万円の範囲内で全額保証しなければならなくなるのです。最近は少なくなりましたが以前は大手を含めた商工ローンの、ほとんどがこの根保証契約であったため社会問題になったこともあります。根保証契約は、一度引き受けると、非常に重い責任を負うことになるので、慎重な対応が必要です。

3.保証人の救済策
 
  保証人の求償権(保証債務を支払った保証人の権利)という言葉があります。この点についても設問に沿って、ご説明したいと思います。甲が支払ができなくなってしまったわけですから、保証人の乙が代わりに銀行に返済するのはやむを得ないとしても、乙が支払った債務は本来甲の債務です。したがって、甲との関係では、乙が銀行に支払った300万円については、甲に返済を求めることができます。これを保証人の求償権といいます。さてそこで、この保証人の求償権をどのように行使するかということですが

① もし甲に不動産があって、銀行が担保をつけていたら・・・甲が銀行に提供していた担保権は当然に乙の権利となります。これを保証人の代位権といいます。従って、乙は銀行に書類を準備してもらい抵当権の移転という登記をすることによって自身の求償権を保全できるということになります。つまり甲がその後も乙に支払をしてくれない場合であっても、乙はその不動産を競売して債権回収が実現できるということになります。

② 次に、乙の求償債権に新たな保証人をつけてもらうという方法も考えられますが、あまり現実的ではありません。

③ あるいは、乙自身が、銀行とのあいだで支払いの減額交渉をするということも考えられます。

④ いずれにしても、保証人になる際は債務者の資力や信用をきちんと見定めて、なるべくなら、共同保証人を立ててもらうとか、将来の求償権に備えてあらかじめ担保や保証人を立ててもらうなど、負担や責任の分担をはかるといった、事前の予防意識が大切であると思います。

4.保証債務と相続の関係

たとえば、設問の保証債務を負った乙が不幸にも病気で亡くなられてしまった場合、さて乙の保証債務はどうなるのでしょうか。

① 保証債務に限らず故人の債務は相続の対象となります。したがって、妻と子がいれば妻と子に、いなければ親に、親も他界していれば兄弟へと、それぞれの順位に応じて債務は相続されます。

② ところで民法第915条には相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か以内であれば、相続放棄は可能であると定めています。この相続放棄とは、家庭裁判所に申述し受理されることによって相続によって発生した債務を支払わなくてもよいということになります。(ただし他の遺産も放棄することにはなる)

③ すると、故人となってしまった乙に保証債務その他の負の遺産が多ければ故人に身近な妻や子はわかっていますから、速やかに相続放棄をするでしょう。しかしその結果、債務は次の順位の相続人である親もしくは兄弟へと移っていきます。遠方の兄弟などであれば、これはもうまさに寝耳に水・晴天のへきれきで、ましてや故人が死亡してとっくに3カ月過ぎてしまっているということで大慌て・・ということがよくあります。

④ ここでご注意いただきたいのは、この相続放棄の起算点はいつなのかということです。上記のとおり法は相続の開始があったことを知った時から3箇月以内(これを熟慮期間という)に申述しなさいとあります。この相続の開始を知ったときとは、一律に亡くなられた方の死亡の事実を知った時というのではなく、自分が相続人であるということを知りかつ負債を含めた相続財産のあることを知ったときからという考え方が有力な判例の考え方です。従って、故人が亡くなられて何年たっていても、債権者の通知などで初めて自分に相続権があると知った時からととらえることができますので、そこから3カ月以内に申述すればよいということになります。

5.身元保証とは

 親類や友人の子供が就職する際に身元保証人になってほしいと頼まれると、身元保証とはどんなものか深く考えずに好意から簡単に引き受けることが多いのではないでしょうか。身元保証とは保証人と雇主との間において、雇われる人(被用者)が雇主に損害を与えた場合に、その損害を賠償する責任を負うという契約です。従って、気軽に身元保証人になると、時には「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。もっとも、身元保証人の責任が重くなりすぎないように保護するため「身元保証に関する法律」によって責任の範囲が限定されています。例えば保証期間は、特に定めのない限り契約後3年間(商工業見習者は5年間)とされ、仮に期間を定める場合でも5年を超えることはできません。
 また、被用者に仕事の上で不適任・不誠実な行跡がありそのために身元保証人に責任を生ずるおそれがあるとき、または、被用者の任務または任地を変更し、そのため身元保証人の責任が加重されたり従来どおり監督できなくなるような場合は、遅滞なく身元保証人に通知する義務を雇主に課しています。そしてこれを受けた保証人は、契約を解除して以後の責任を免れることができます。また負担すべき賠償額については、通常の金銭貸借の保証人ならば借主本人と同額の支払義務がありますが、身元保証人の場合は全額責任を負うことはありません。雇主の管理・監督上の過失、身元保証にいたるまでのいきさつ、被用者の職務内容の変更とそれを知っていたか否か、といった諸般の事情を斟酌したうえで身元保証責任額が決められます。

6.おわりに

 「人生、保証人になるべからず。」これは、紀の書物にも記載のある普遍的な格言です。個人の方が保証人になる場合、一般的に何の利益を受けることもなく、保証債務を負担することになります。利益はなくて負担ばかり背負うことになるのですから、ほんとに割の合わない話です。しかし、赤の他人からの依頼であれば断ることも簡単ですが、冒頭の設問のように友人であったり、親戚から頼まれたりすると、簡単に断ることもできません。日本人は特に義理・人情がからむと、合理的な判断だけでは行動できず、やむなく保証人になってしまうこともあるようですね。また、設問のように甲は絶対に迷惑をかけないからといって念書まで差し入れましたが、迷惑をかけることを予告して保証を頼む人はいません。いずれにしても、保証は保証人である乙と銀行との契約ですから、甲からの念書は何の意味ももちません。銀行にとっては知ったことではないということになります。それから、頼まれるほうも、すぐに矢面に立つわけではありませんから、その辺に気持ちの緩みが生ずるのかもしれません。しかし、結果はどうでしょうか、乙は多額の借金を背負ってしまいました。友人であるからとの理由で、引き受けた結果、自らの生活基盤は脅かされ、あるいは崩壊の憂き目に遭いかねない状況になってしまうわけです。結局、友情関係も結果的には破綻してしまうのではないでしょうか。

参考文献 民事法研究会 保証人110番


このエントリーをはてなブックマークに追加