相続放棄後の遺産

rental;wikipedia キューバの国章→goo.gl/5sjn8f

Q 相続放棄をしたら遺産はどうなるか?

A  放棄した相続人は、その相続については、初めから相続人とならなかったものとみなされます。同順位の一人が相続放棄すれば、他の同順位の相続人の相続分が増え、同順位の者がいなければ、次順位の相続人が相続人となります。配偶者や第2、第3順位の相続人もすべて相続放棄した場合は相続人不存在となります。

【相続放棄後の相続人の不存在】
すべての相続人が相続放棄をすると、相続資格のある相続人がいない状態となり、相続財産を誰が管理し引き継ぐのかが問題となります。
そもそも、相続人は、相続放棄をするまでの熟慮期間中も、自己の固有の財産におけると同一の注意をもって、相続財産を管理する必要があります。これは財産の帰属が確定するまでの不安定な状態から問題が生じないよう相続人に課せられた義務です。そして同様に、相続放棄後も管理を引き継ぐべき者が管理を開始するまで、自己の固有の財産におけると同一の注意をもって、相続財産を管理する必要があります。これは、相続放棄によって生じる管理の空白期間に、相続債権者その他の利害関係人の利益を害することのないよう課せられた義務です。よって、他に共同相続人がいる場合は、その者が管理を開始してはじめて、相続放棄した相続人の管理義務が消滅します。すべての相続人が相続放棄した場合には、民法951条により、相続人があることが明らかでないときに該当し、同952条により相続財産管理人を選任し、管理を引き継ぐこととなります。同条の要件は①相続開始後、②相続財産が存在し、③相続人のあることが明らかでない場合に、④利害関係人または検察官の申立てに基づいて、⑤必要性がある場合は、家庭裁判所によって、相続財産管理人が選任されます。なお、申立人となりうる利害関係人には、相続放棄した相続人も含まれます。

【相続財産管理人関係事件における手続きの流れ】
手続きは資産超過型(被相続人のプラスの財産がマイナスの財産より多いケース)のスキームと、債務超過型(被相続人のマイナスの財産がプラスの財産より多いケース)のスキームがあります。実務では債務超過型の事件が比較的多いように感じます。もし弁済後も積極財産が残る場合は、資産超過型となり、引き継ぎのための手続きと相続人捜索のため長期間の公告等を必要とします。おおまかな流れは次のとおりです。
①家庭裁判所に対する相続財産管理人選任の申立て
②相続財産管理人を選任した旨の官報公告
③相続債権者及び受遺者に対する請求申出の官報公告
※債権者等への清算が必要であれば、相続財産を換価し弁済しあるいは配当する。債務超過型であれば、ここで管理は終了する。
資産超過型となりますとさらに以下の手続きが必要となります。
④相続人の捜索の官報公告(6ケ月以上の期間を要する)
⑤特別縁故者に対する財産分与の申立て
※上記④の期間の経過により相続人の不存在が確定すると、特別縁故者に対する財産分与の申立て、すなわち相続人ではないけれども特別の関係にある者→例えば、「被相続人と生計を同じくしていたもの」「療養看護に努めたもの」等の申立てがある場合、相当であるかにつき財産管理人の意見を家庭裁判所に申述する。
⑥分与の審判もしくは申立却下の審判
⑦特別縁故者に対する分与財産の引渡し
⑧残余財産の国庫への引継
⑨管理事務終了

相続財産管理制度については、こちらのコラムも、ご覧ください。→マイベストコラム【相続人不存在】

参考 新日本法規 相続における承認・放棄の実務

相続放棄の熟慮期間伸長

rental;wikipedia アイルランドの首都ダブリンの市章→goo.gl/FYecdU

Q 3ケ月以内に相続放棄するかどうか判断できない場合はどうしたらよいか?(熟慮期間の伸長)

A 熟慮期間である3ケ月以内に承認もしくは放棄するかの判断ができない場合に、特別な事情がある場合は、利害関係人または検察官の申立てにより、家庭裁判所において、その熟慮期間を伸長することができます。特別な事情とは、相続財産が分散している、相続財産の構成が複雑である、あるいは被相続人の債務が不明であるなどの理由により、相続財産の調査や承認または放棄の選択考慮が3ケ月では困難な場合をいいます。

【手続き】
申立人
 利害関係人 (相続人、相続債権者、受遺者、相続人の債権者、次順位の相続人等)
相続人は、他の相続人の熟慮期間の伸長を求めることもできます。
 検察官

申立先(管轄)
 相続が開始した地(被相続人の最後の住所地)の家庭裁判所

申立てに必要な書類
 1.被相続人の住民票除票又は戸籍附票
 2.利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証する資料(親族の場合,戸籍謄本等)
 3.伸長を求める相続人の戸籍謄本
 審理に必要な場合、追加書類を求められることがあります。

申立期間
 相続開始後、熟慮期間の経過しない間に申立てする必要があります。

家庭裁判所ウェブページ記載例はこちら

伸長期間
 伸長される熟慮期間は、事情に応じ裁判所が決定します(通常3ヶ月、事案により半年程度)。 場合により再度の伸長の申立てをすることができます。

参考 新日本法規 相続における承認・放棄の実務

未成年者の相続放棄

rental;wikipedia トルコの首都アンカラの市章

Q 相続人が未成年者等である場合の相続放棄はどのようにするのか?(未成年者の相続放棄)

A 未成年者の法律行為は法定代理人である親権者が代わりに行うのが原則です。ただし、親権者と未成年者との間で利益が相反する場合は、家庭裁判所に申し立てて特別代理人を選任しなければなりません。もっとも、親権者自身も同時に相続放棄する場合は、法定代理人として未成年者のために相続放棄することができるとされています。熟慮期間の起算点は、法定代理人が未成年者のために相続の開始があったことを知った時から起算されます。相続人が成年被後見人である場合も同様です。ただし成年後見監督人が選任されている場合は、かかる監督人が被後見人に代わって放棄することになり、特別代理人の選任は不要です。なお、後見人が被後見人より先もしくは同時に相続放棄する場合でも後見監督人の同意が必要です。相続人が被保佐人である場合は、特別代理人の選任は不要です。民法13条6号により、被保佐人は保佐人の同意を得て相続の承認・放棄をすることができるからです。

特別代理人の選任申立手続き(親子間の利益相反)
利益相反(親子間の利害の衝突)の判断は、客観的、外形的に考察すべきであり、親権者の動機や意図に基づいて判定すべきではないとされます。
申立人 親権者、後見人、子の親族その他の利害関係人
管轄  子(未成年被後見人)の住所地の家庭裁判所
添付  ①親権者 ②子の戸籍謄本 ③特別代理人候補者の戸籍謄本 ④利益相反に関する資料(遺産分割協議書案、契約証書案など)

家庭裁判所ウェブページ特別代理人選任申立書記載例はこちら

【参考】
◆家庭裁判所での相続放棄の申述の受理は、一応の公証を意味するに止まり、相続の放棄が有効か無効かを終局的に確定するものではなく、その有効か無効かは民事訴訟法による裁判によってのみ終局的に解決するものである。(東京高判昭27・11・25)

◆共同相続人により相続登記後その一部が相続を放棄した場合、残余の相続人において相続放棄を登記原因として放棄者に対し、その持分の移転登記を求めることができる。(東京地昭31・9・26判決)

◆配偶者と数人の子が共同相続人である場合に、この一部が相続を放棄したときは、放棄した子の相続分は他の相続人である残りの子と配偶者とに相続分に応じて帰属すると解するのが正当である。(最高昭43・2・27三小判決)

参考 新日本法規 相続における承認・放棄の実務

相続放棄の期間


rental;wikipedia ギリシャの首都アテネの市章 goo.gl/E2EviH

Q 相続放棄はいつまでにしなければならないのか?(相続放棄の期間)

A 相続放棄は、原則として、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述してしなければなりません。相続人が相続の放棄をしないうちに、さらに死亡した時は、死亡した相続人の相続人が、自分のために相続の開始があったことを知った時から起算されます。

1.熟慮期間
相続を放棄するためには、前提として相続財産(積極財産と消極財産)を調査する必要があります。この調査期間を熟慮期間といいます。民法は、この熟慮期間を「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」と定めました。ただし、特別な事情がある場合は、利害関係人の請求により家庭裁判所において熟慮期間を伸長することができます。

2.再転相続人の熟慮期間
たとえばAが死亡し、Aの相続人Bが相続の承認や放棄をしないまま死亡し、Bの相続人CがAの相続人となることを再転相続といいます。この場合の熟慮期間は、相続人の相続人(再転相続人)Cが自分のために相続の開始があったことを知ったときから起算されます。

3.熟慮期間の起算点
熟慮期間の起算点は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とありますが、これをいつとみるべきかの問題があります。判例をみますと、古くは「被相続人の死亡の事実を知ったとき」(大判大10・10・20民録27.1807)とあり(相続原因覚知時説)、のちに、「被相続人の死亡の事実を知っただけでなく、それによって自分が相続人となったことを覚知したとき」(大決大15.8.3民集5.10.679)(相続人覚知時説)と改めました。その後も、これを起算日とする判例は少なくありません。しかし相続財産の認識がない場合には熟慮期間は進行しないとするもの(東京家審昭47.6.2家月25.5.50)等や、特段の事情があるときは、熟慮期間経過後であっても相続財産の存在を知った後、遅滞なく限定承認ないし放棄することが許されるとしたもの(東京高決昭57.9.27家月35.11.89)等々、相続財産の認識がない場合に熟慮期間は進行しないとするものが多くなってきました。そして最高裁は昭和59年に新しい判断を示しました。すなわち「相続人において相続開始の原因となる事実およびこれにより自己が相続人となった事実を覚知したときから3カ月以内に限定承認または放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との交際状態、その他諸般の状況からみて、当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において、このように信じることにつき相当な理由がある場合には、熟慮期間は、相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である」としました。したがって、借金等の相続債務の存在についても、相当な理由がある場合には、熟慮期間が延長される場合が考えられます。

4.熟慮期間の計算
熟慮期間の起算点については、民法の原則どおり初日は算入しません。

参考 相続における承認・放棄の実務(新日本法規)